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hr114
父が急死したあと門人達は逃げるように去り、歴史ある南東華流道場はあっけなく潰れてしまった。私は弟たちを連れて村を去り、町で売り子や工員をやって食いつないでいた。その町で私は噂を聞いた…道場を潰したのは関闘家流の道場主、王漢だと。父は病死したのではなく、暗殺されたのだと。王漢はヤクザと手を組んで町の乗っ取りを企てており、父を殺したのは誘いに乗らなかったからだと。

真相を探るため、私は夜の商売に身をやつした。関闘家流に接近するのは簡単だった…奴等は肩で風を切って町をのし歩き、飲み散らかし食い散らかしては見境なしに女に手を付けていたからだ。なかんずく、王漢の女好きは広く知られていた。酒場で勤めていれば、遠からぬうちに必ず王漢に会うと確信していた。

ある夜、ガラの悪い連中をゾロゾロ引き連れ、禿げ頭の巨漢が店を訪れた。名を聞くまでもない、王漢に違いない。私はわざと冷淡な態度で彼に接した。王漢はお高く止まった女を落とすのが何よりの好みだと聞いていたからだ。目論見どおり、彼は盛んに色目を使い、しきりに身体を触ってきた。「やめてください先生、困ります」わざと高慢な返事を返すと、王漢の目に好色の炎が宿るのを見た。散々に食い散らかしたあと、彼等一行は金も払わずに店を引き払ったが、王漢は私の胸元に札束をねじ込んで囁いた。「また来るからな」と。

王漢と二人きりになれる機会を伺っていた。私も南東華流を学んだ者の一人だ、王漢がいかなる使い手であろうとも、隙を狙えば一撃は叩き込める。誰であろうと、南東華流の一撃が入れば気の流れが詰まり、全身が脱力して指一本動かせなくなる。その上で真相を確かめる気だった。返答次第では、頚動脈を掻き切って殺してやるつもりだった。私もただでは済まないだろうが、自害する覚悟はできていた。弟たちには済まないが、それが父の無念に報いる唯一の方法だと考えていた。

機会は意外に早くやってきた。彼が二度目に店を訪れたとき、札束をちら付かせて二階へ上がろうとか言い出した。私が戸惑う素振りを見せると、彼は更に興奮したようだった。悪いようにせんから、優しくしてやるからとほだしてみせ、私は彼に背を押されるようにして階段を上がった。灯を入れない部屋は真っ暗だ。彼が灯を灯すべく背中を向け、私が突きを入れるべく構えた瞬間…あの体躯からは想像できないほどの速さで、王漢の回し蹴りが飛んできた。みぞおちに直撃を食って、私は床に倒れ伏す。油断していたのは、私のほうだった?!そして遠ざかる意識…。

次に目覚めたとき、私は柱に縛り付けられていた。ここは何処だろう…店の二階ではない、どこだか知らない場所だ。助けを呼んでも無駄だろう。たとえ誰かに聞こえたところで、関闘家流の一味に歯向かう者がいるとは思えない。息も絶え絶えの悲鳴を聞こえぬ振りをして通り過ぎる風景は嫌というほど見た…。

「馬鹿な女アルね。お前があの爺いの娘だと、気づかないとでも思ったアルか?」

…王漢だ。たった一人で、隙だらけの全裸で、勝ち誇ったように葉巻を咥えている。今この瞬間、片足だけでも動かせれば、奴の金的に一撃を入れてやれるのに!私が縄の下で身を捩るのを見て、彼はさも嬉しそうに微笑んだ。

「無駄アルよ、お前さんの縄抜け術じゃその縄は解けないアルね。」
「…卑怯者!卑劣漢!アンタなんか最低よ、このゴキブリ!ドブネズミ!」
「口の悪いことアルね。親父さんの教育がよっぽど悪かったアルか?」
「ち…父を侮辱するなあぁぁっ!!貴様が、貴様が父を殺したんだろうっ!!」
「あれまぁ、証拠もないのに、冤罪はよくないアルねー。ボクは精神的に傷ついたアルよ。この精神的打撃に対して補償を要求するヨ…もちろん、君の身体でネ。」
「さ、触るなこの変態!ロリコン!SMマニア!」
「元気の良いことアルね。君の弟さん達も、それくらい元気だと良いアルがね…。」
「ま…まさか、貴様、弟にまで…っ!!」
「おっとっと、ボクに少年男色の趣味はないアルよ。もっとも、うちの門下生には癖の悪い連中もいるアルけどね。君の行動次第で、連中に弟さんを紹介するかしないか、考えててもよいアルね…。」
「くっ…この…。」
王漢の脂ぎった手が胸を、股間を撫で回し、私は縛られた身を震わせて屈辱に耐える。
「君はボクのペットになるアルね。最高ね、ボクを殺そうと考えているペットなんて…。可愛いがってあげるアルよ。君は今までのペットみたいに、簡単に壊れそうにないアルからね。」

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