今、何時頃だろう?彼女は考える。
目隠しの下から、日差しの明るさはわからない。
だが、半ば剥かれた身体が肌寒くなってきたことから、
陽が傾きつつあるのだろうということはわかる。
ここは何処なのだろう?彼女は再び考える。
屋外ではないだろう。だが密室でもない。
隙間風。犬の吼え声。遠くを走る汽車の音。
…町外れの廃工場だろうか。当たらずとも遠からずだろう。
下校途中、いきなり停車した車に、
腕を掴んで引きずり込まれ、変な薬を嗅がされて…
気が付いたときはこうなっていた。
時間の感覚は失せていたが、丸一日も気絶していたとも思えない。
あれからまだ陽があるということは、それほど遠くへは運ばれていない筈だ。
私はどうなるのだろう…と彼女は考える。
そもそも、なぜ私がこんな目に遭わなければならないのだろう?
身代金目当ての誘拐なら、こんな姿を晒したりはするまい。
強姦が目的なら、気絶していた間に用を済ませているだろう。
だとしたら、残る可能性は…
腹の底から冷えてくるような、おぞましい感覚を彼女は感じる。
何ヶ月か前の新聞に出ていた、変質者による女子高生誘拐事件。
遺体はバラバラに切断されてゴミ箱に捨てられていた。
すぐに捕まった犯人は、彼女を殺した理由をこう供述していた。
「僕を満足させてくれなかった」と…
突然響いた金属音に、彼女は思わず身をよじらせる。
だが、相変わらず人の気配はない。
さっきの音は、壊れた戸が風で叩かれた音らしかった。
彼女は足を踏み換え、吊るされた両腕に体重を預ける。
こうしている方がむしろ、自分の足で立っているより楽だった。
彼女の敏感な部分に貼り付けられた器具は、相変わらずビンビンと淫靡な音を立て、
既に違和感も、快感も、嫌悪感も感じないほどに麻痺している。
深い溜息をつくと、また涎が一滴、糸を引いて垂れ下がり制服に染みを作った。
もう、この口枷を外そうともがく気力も、
口枷の下から声にならぬ声を上げて助けを呼ぶ気力もない。
いっそ変態男がここに現われて、私を思うまま犯してくれれば良いのに…
こんな惨めな姿で晒されるくらいならば、一思いに強姦されたほうがマシなのに…
目隠しの下から、涙が頬を伝って流れ落ちる。
日差はますます傾き、彼女の全身がじわじわと冷えてゆく。
相変わらず、変態男が戻ってくる気配はない…。