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hr165
それは私刑の一種だという。いや、単にイジメと言ったほうが適切だろうか。
生意気だと目された女子生徒を縛り上げ、半裸あるいは全裸にして男子便所に監禁し
「肉便器」の捨て札を付けて放り出しておく。
被害者は目隠しを被せられ、相手が誰だか判らないまま次々と犯される。
女子がみずから手を下さないだけに、卑劣で冷酷な手口だ。
最初にその話を聞いたとき、そんな事が現実にある訳がないと思った。
だがある日の放課後、僕はそれを見てしまった。
滅多に人も訪れない、旧体育館離れ一階の男子便所。
用具片付けのついでにドアを開けた僕は、そこで彼女を目撃したのだ。

それは異様な光景だった。
彼女は目隠しをかけられ、口に猿轡を噛まされている。
両腕は後ろに縛り上げられ、両脚を掃除モップに縛り付けられて開かされている。
下着は剥ぎ取られ、アソコが丸見えに晒されている。
更に異様なのは、彼女の太腿に記された捨て書きだった。
「公衆便所」「犯してください」「中出しOK」「お○んこ」…
真紅の文字は、ルージュで殴り書きされたものらしい。
気配を感じたのか、彼女は目隠しされた顔を僕のほうに向けた。
(この子…2組の西村だ…)
それに気がついて、腋の下を冷汗が流れ落ちた。
「ふーっ。ふーっ。ふーっ。」
猿轡から言葉にならない息が漏れ、唾液が糸を引いて垂れ落ちる。
何を言おうとしているのだろう。「助けて」と言っているのだろうか。

西村は僕の幼馴染みだった。小学校の5、6年でクラスが同じだった。
しかし夏休み開けの二学期、彼女は髪を茶髪に染め、唇にルージュを引いて現れた。
何があったのかは知らない。ヤンキーの彼氏が出来たとか、その彼氏に捨てられたとか、
そんな噂は僕も耳にしていた。どこまで本当のことだか判らない。いずれにせよ、
僕らの年代には「よくあること」なのだろう。
彼女は僕と口を利かなくなった。同級生からは「ケバいタカビー」と敬遠された。
休み時間など、彼女は一年上の男子とつるんで甲高い声で笑ったりしていた。

その彼女が、放課後の男子便所で、あられもない姿を晒されている。
僕は迷った。彼女を助けるべきだろうか?しかしきっと何処かで見張っている奴がいる。
彼女を助ければ、助けた者がイジメの対象にされる。それは学校の闇の掟だった。
誰かに知らせるべきか?いや、誰に知らせようが同じことだ。クラスメイトは
誰が敵で味方だか判らない。教師がイジメ解決の役に立たないことは誰もが知っている。

ならば、見て見ぬふりをして彼女を見捨てるべきか?それともいっそ…。

@A_g@Cu`bg