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hr230-1

「そしたらセンセー、今日はこれで失礼します。」
手伝わせていたプリントのホチキス留めが終わって、日直の高城裕子は通学鞄を肩に掛けながら言った。
「おぅ。気ぃ付けて帰りな。寄り道すんやないで。」
「嫌やわセンセー、あたし、もう小学生やないもん。」
「小学生やないから気ぃ付けろ言うとんのや。」
「ハイハイ」
「ハイは1回でええ。」
「ハーイ。」
全く、近頃の生徒ときたら教師に対する礼節も何もあったものじゃない。馴れ馴れしいというか、図々しいというか。
「しゃーないな、まったく。」
放課後の職員室で僕はひとりごちた。ピチピチの女子高生に囲まれてさぞ羨ましい職場だと思われているかも知れないが、毎日相手にしているとあんなの猫か雀みたいなもので、女とも何とも思わなくなる。
(そういや、何かメールが来てたよな。)
僕は携帯を確認する。大学時代の悪友Sから、面白い催し物があるから来ないかという誘いが来ていた。それが何であるかを尋ねても、来てからの秘密だという。どうせ碌なものではあるまい。なんせ学生時代から違法薬物を使った乱交パーティーなどを企画していた奴だ。
(…今夜か、一体何を企んでいるのやら。)
僕も教師である以前に独身男性だ、怪しげなパーティーの匂いには惹かれてしまう。問題は、それが自分の職業に及ぼす危険だ。高校教師が違法薬物乱交パーティーに出たなどと知れたら、良くて依願退職だろう。
(仕事のことは心配すんな。俺が保障する)
Sはそうメールに書いている。さて、信用して良いものかどうか…。

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