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hr317-1

彼女は「おじいさま」の88歳の誕生日に招かれた。
「おじいさま」が誰なのか彼女は知らない。
血縁なのかどうかも知らない。
両親からはただ「とても偉大なお方」とだけ言われ、
「くれぐれも失礼のないように」と申し含まれて送り出された。
生まれて初めて訪れる「おじいさま」のお屋敷は広大で、
彼女は何もかもが珍しくてはしゃいでいた。
新潮したセーラーカラーのワンピースも、
おじいさまが気に入ってくださればいいなと思っていた。
使用人たちの妙な視線やひそひそ話に、彼女は気づいていない。
(もしかして、あの子?)
(ほら、今日はおじいさまのお誕生日会でしょ?その出し物よ)
(あんな子供が?まだ中学生にもなってないんじゃない?)
(余計な詮索は無用よ。私たちは言いつけに従うだけ…)

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